最近クライミングを座学にて学ぶ機会があった。
いつもはただ自身の限界グレードを上げたい!ハング怖い!ってことしか考えてないので新たな発見がたくさんあった。
一番ビックリしたのが講師の方がランダムに受講者に質問していくんだけど、
そんなん分かるわけないやろ...。
って質問に当てられた受講者たちはスラスラと、当たり前の質問に答えるが如く秒で回答していったこと。
「うわっ、何もわかってないの俺だけじゃん...」
って気が付かされた。
それから講義がおわるまでの約30分間、当てられないように気配を消し、漫画ハンター×ハンターで言うところの“絶”状態を維持し続けた。
自身の知識不足に情けなさを感じたので今回はカラビナの基本的な知識を忘備録として記事にした。
この記事でわかること
- クライミング用のカラビナとそれ以外のカラビナの違い
- カラビナの種類
- 表示の読み方
- カラビナの強度低下が起きる場合
カラビナとは

登山のために開発された一部が開閉することが出来る金属のリング。
主にロープやハーネスと併用して使用し、命綱を固定したり、ロープの支点にしたり、荷物の引き上げなどに使用する。
日用品や業務などにも使用され、工具をぶら下げたり、キーホルダーやファッション目的など幅広く使用されている。
クライミング用カラビナとそれ以外のカラビナの違い。
クライミングにおいてカラビナは命を守るうえでとても重要なギアの一つ。
強度が保証されている専用のカラビナを使うこと。
ではクライミング専用カラビナとそれ以外のカラビナの違いを未経験者向けに書いていく。
UIAAかCEと表記されているのがクライミング用カラビナ
クライミングで使用できるカラビナは安全の規格がある。
規格は二つあり、
- UIAAとは 国際山岳連盟の認証マーク、表記されていればクライミングで必要な強度が保証されている証となる。
- CEとは EU(欧州連合地域)での安全基準を満たした製品であることの証明、ヨーロッパではこのマークがついていないとクライミング用として販売できない。
UIAAとCEのどちらか一つも表記されていなければクライミングに使用するのは避けた方がよいだろう。

メジャーアクシスが20kN程度以上がクライミングには理想的
メジャーアクシスとはカラビナの最も引っ張り強度の強い方向のこと。
20kN(キロニュートン)は力の単位でkgf(キログラムフォース)に換算すると約2000kgf(正確には2040kgf)。
要するに約2.0tの重さにまで耐えられるということ。
UIAAやCE認証が表記されているクライミング用カラビナでメジャーアクシスが20kN以下のカラビナをあまり見かけない、なので「20kN以上が理想的」と書いた。
カラビナの強度については記事の後半で説明するよ
not for climbing(クライミング用じゃありません)と刻印されている

親切なカラビナにはnot for climbing(クライミング用じゃありません)と刻印されており、未経験者にもわかるようになっている。
何も表記されていないカラビナも沢山あるが、表記が無い時点でクライング用ではないので分かりやすいだろう。
やたら小さいカラビナや複雑な形(デザイン重視)はキーホルダー用
クライミング用カラビナと比較すると分かりやすい。
キーホルダー用カラビナはとても小さかったり、複雑な形(デザイン重視)だったりする。

写真右側の黒いカラビナがキーホルダー用だが、このサイズのクライミング用カラビナは存在しない。

これはSビナ。機能的に見えるがクライミング用カラビナではない。
初心者は間違えないように注意して欲しい。
たとえ大きいカラビナでもちゃんとUIAAやCEマークが付いているかを確認してクライング用だということは確認しよう。
クライミングで使用するカラビナの種類
クライミング用のカラビナには大きく分けて3種類ある。
- TypeB…オフセットD型カラビナ
- TypeX…オーバル型カラビナ
- TypeH…HMS型(洋ナシ型)カラビナ
順番に説明していこう。
TypeB…オフセットD型カラビナ
クライミングで最も使用されるであろう強度と軽量に特化したカラビナ。
力の支点にの位置(ロープと支点位置)がゲートの反対側の最も強度の高いスパインの近くにくるような形になっている。
主にリードクライミングでの各支点(クイックドロー等)や終了点に使用される。
終了点や懸垂下降で使用する場合はゲート部分に安全環が付いているものを使用するのが良い。

左の青色がゲートが曲がっているベントゲート。
中央のオレンジがゲートの細く軽量化されたワイヤーゲート。
右の黒色が外れ止めの付いている安全環付ゲート。
TypeX…オーバル型カラビナ
幅が広く均等な形をしているので幅の広いスリングを使用する際やプーリー(滑車)を取り付ける際に適している。

TypeH…HMS型(洋ナシ型)カラビナ
メジャーアクシスの幅が広くビレイや懸垂下降に向いているので一つは必ず持っておきたい。
ゲートの幅が広くロープの取付がしやすい。
サイズがオフセットD型と比べて大きい、なのでセルフビレイを掛けるのに使用するとやりやすい。
ATS(ビレイ等で使用する確保器)はHMS型カラビナと併用して使用するため、分かりやすいようにHMS型カラビナには“H”マークが表記されている。

右側のくびれた形のHMS型はビレイの際にカラビナが回転するのを防ぐタイプ。
ビレイ以外にはとても使いにくい。

UIAAマークの右側にあるHマークがHMSの証
カラビナの各部名称
カラビナには強度の強い位置や各部分に名称がある。
図で各名称を説明していこう。

オフセットD型カラビナの特徴はスパイン(脊柱)側に支点が寄るようになってること。
スパイン側の方がゲート側より強度が高いのはみれば分かる。
ナローエンド側をアンカーや支点側、ブロードエンド側をロープ側と決めて使用すればロープが傷む可能性を低くすることが出来る。
アンカーにカラビナをかけると金属と金属で擦れ合いバリが出来てしまうからだ。
カラビナの強度について

HMSカラビナの表記の説明。
強度は大抵kNにて表記されているが昔のカラビナはkgで表記されているものもある。

このカラビナの場合だとメジャーアクシスが23kN、マイナーアクシスが8kNとなる。
クライミング中にカラビナが回転しないような配慮をしないと強度がかなり落ちてしまう。

クライミング中にゲートが開く可能性は十分にある。
岩の角にゲートが押し付けられたりすると簡単にゲートが開くのでカラビナを取付る時は周囲の状況も考慮しなければいけない。
カラビナの強度低下と対策
カラビナに記載された強度はあくまでも制作時の強度である。使用中に激しい衝撃を与えれば亀裂や変形する可能性もあるので定期的に点検が必要だ。
てこの原理によりカラビナの強度が低下する場合
クライミングルート途中に取り付けるクイックドローもカラビナの位置に岩の出っ張りやハングの角があったりするとてこの原理により横からの応力がかかりカラビナの強度が低下する。
カラビナの負担かからない場所をさがしてクイックドローの長さを調節しなければいけない。
スリーアクシス(3点からの引っ張り)
メジャーアクシスやマイナーアクシス直線上のベクトルについての強度であり、3方向からのベクトルに関しては強度の低下が起こる。(表記された強度よりも低い力でカラビナが壊れる)

強度計算については説明が難しいので詳しいサイトをさがしてね(他力本願)
カラビナは錆びる
クライミング用カラビナの素材は航空機にも使用される合金のジュラルミン製。
ジュラルミンにはアルミが多く含まれているが、強度を上げるために銅なども含まれている。
銅は錆びるので、ジュラルミンも錆びるのだ。
雨に濡れた程度では問題ないが、海の近くで使用した際には塩気を取り除くのが良いと思う。
これは余談だが、ジュラルミンは水銀に弱く、水銀に触れるとアマルガムというジュラルミンがスポンジ状?に膨らむ現象が起きる。
飛行機内に水銀を持ち込んではいけないのはそのためだ。
気になった人は『アマルガム』で検索して欲しい。
カラビナは用途に合わせて使い分けよう
クライミング用のカラビナとそれ以外のカラビナについて説明してきたが、クライミング用カラビナにも状況や場面によって最適なカラビナがそれぞれあるので経験者に教えてもらうのも良いがやっぱり自分で使ってみて選ぶのが一番よい。
安全環付カラビナにしてもゲート部のロックにはいろんな種類があり、高所で不安定な場所で作業をした時にどのタイプの安全環付カラビナが使いやすいか選ぶのも楽しい。
ちなみにワットソンが好きなのは回して締めるシンプルなスクリュータイプの安全環だ。
カラビナは命を預ける重要なギアなのでロープ同様に消耗品だと考えよう。
ロープほど交換時期が早いわけではないが、変形したカラビナや拾ったカラビナのクライミングでの使用はやめて、キーホルダーにするのが良いかもしれない。
交換時期や使用方法は自分でよく考えて使おう。